活動日誌の写真

S-310 あかつき 翼班 構造設計・活動報告

一次構造は翼の骨格です。全備重量200kgもの機体を浮上させ、その飛行に耐えられる強度を有する必要があります。メインスパーの重量は全備重量の約20%を占めており、必要出力軽減のための軽量化が求められます。しかし、一次構造の軽量化は大きなリスクを伴うため、安全性の証明が重視されます。そのため、今年度はこのことを重点に置いて1次構造の設計・製作に取り組んできました。
桁の軽量化を図るため、我々はCFRPパイプの積層数の削減を行い、さらに部分積層を行いました。結果、昨年度と比較して2kgの軽量化を実現しました。

設計方針

S-310の「あかつき」はS-300の墜落要因をなくすことを目的とした設計をしました。
構造的弱点として中央翼のストラットおよび迎角調整機の配置が挙げられ、これはS-300を始めとする歴代の機体に見られます。以前の配置では揚力を受けたときリアスパに剪断力が発生するのですが、その剪断力を考慮してリアスパの積層構成の設計を行っていませんでした。他大学チームなどを参考して、剪断力が生じない構造とそれに適した迎角調整機を設計しました(図1)。

図1:S-310 中央翼コクピット接合部構造

制作について

製作面では昨年度から自作治具を導入し始めました。今年度も引き続き自作治具を多く導入し製作精度の向上に成功しました。また製作方法の見直しや精度の判断基準の改善などで時間パフォーマンスの向上にも成功しました。
昨年度まで主翼同士の接合部では木製のリンクかんざしを使用していましたが、湿度や温度で膨張収縮が激しく接合調整がかなりやりづらい状況でした。今年度ではそれを廃止し硬質発泡ウレタンをコア材としてウレタンかんざしを採用しました。これにより膨張の問題を解決することができました。またカーボンブレートを使用する場所で再度強度解析をして、構造の見直しなどを行い、全体で使用するプレートの重量を削減することができました。

図2:S-310 S34L 接合部ウレタンかんざし

総括

構造全体として軽量化に焦点をあてて設計および製作をしました。それに伴う強度低下を解析等で定量的に評価し定常飛行に耐えうる構造を製作しました。結果として昨年比で15%の軽量化に成功しました。また昨年度より多く使用していた自作治具に今年度はさらに改良を加え主翼製作精度を向上することができました。