- Groupフェア班
- Date2025.12.16
S-310 あかつき フェアリング班 設計・活動報告
S-310は「定常飛行可能な機体」をコンセプトとして設計された機体でした。そのため、機体パーツの中でも一際大きな体積を占める弊班では、「投影面積の削減」と「機体の軽量化」に重きを置き、機体の低抗力化と軽量化に力を注ぎました。
製作について
長年の弊班の課題として、制作精度の低さが指摘されていました。原因として、主材である55倍発泡スチロールの加工の難しさがあります。機体の形状は曲率が高く複雑な構造を持つため、過剰に削れることや左右のバランスが崩れてしまうことが頻発しました。また、完成した後も太陽の熱や自重による変形などの問題が存在していました。そのため、S-310ではパーツを丸ごと覆うサイズの型を採用し、複雑な曲率にも対応できるようにしました(図1)。また、パーツの製作途中に保護フィルムを貼るようにし、熱や自重による変形を極限まで抑えました。


素材について
S-310はパイロットが2人とも長身だったため機体の縮小は難しいという課題を抱えていました。そのため、「軽量化」という目標に対しては、素材の軽量化で挑みました。そのうちの一つが接着剤をエポキシ樹脂からスチレンノリヘ変更したことです。S-300以前で使われていたエポキシ樹脂は高い圧縮・曲げ強度を持っていたのですが、硬化時間が長く、接着面を大きく取る必要がありました。そのため、S-310ではエポキシ樹脂に強度では劣りますが、比較的軽量で硬化時間が短いスチレンノリを採用しました。これにより接着面が小さくなり、接着剤の使用量を抑えることと機体の厚みを20mmから15mmに変更することをも可能とし、機体重量の大幅な軽減にも貢献しました(図2)。

歪み抑制について
S-310からの試みとして制作の順序を入れ替えてフィルムによる歪みの抑制に取り組みました。従来ではパーツの外側→内側→フィルムの順で制作するところを外側→フィルム→内側の順で制作することでフィルムのしわを減らし、余計な力が入らないことでパーツの歪みも軽減できました(図3)。また、保管がしやすくなり傷がつきにくくなるなど運用上の利点もありました。先ほどの接着剤も含め、運用が簡単になったことで人によるミスを減らし、高い精度での制作ができたと考えています。

総括
フェアリングの持つ課題の多くは、信用できるデータが少なく、抱えている問題を認識しにくいために
発生しています。設計のデータと実測のデータを比較し、どこに薗且薗吾が生じているかを判断し、誤差を減らしていく。これを繰り返すことでより高精度かつ高性能な機体を設計できると考えます。