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S-310 あかつき 翼班 空力設計・活動報告

翼の二次構造は機体の空力性能を司り、二次構造の精度が機体全体の性能を左右します。一方で、主な材料はスタイロフォームであり接着剤や両面テープとの相性が悪いうえに繊細な扱いを要し、精度を出しにくい箇所でもあります。S-310ではそれまでに培われ、改善されてきた製作方法を遵守しつつ課題点の克服や精度向上を目指しさらなる製作方法の改善を行いました。
設計方針に関しては全体設計のセクションと重複するためここでは割愛させていただきます。

製作

【新接着剤の導入】
昨年度まで、二次構造で使用していた接着剤はスチノリのみでしたスチノリは強力でしたが弾性接着剤であるため硬化後はゴム状弾性体なり、後縁部などの曲げがかかる箇所では歪みが生じてしまっていました。S-310では新たに「ゴリラグルー」を使用しました。高価でしたが、スタイロにも使用可能なうえポリウレタン系であるため硬化後は剛性の高い物質となり後縁部や破損の修復部など剛性が必要な箇所に最適でした。ゴリラグルーを使用することによって後縁部の歪み大幅に抑えることができました。また、主桁と翼リブの最終固定に 使用し、翼全体の強度の向上を固りました。これによりスチノリの使用量を抑えることができたため、前年度まで両面テープを使用していたリブ側面のバルサの固定にスチノリを使用することができ、劣化による剥がれを抑えることができました。

図1:ゴリラグルー
画像引用元:https://www.gorillatough.jp/products_1.html
図2:S-310 後縁

【プランク成形の精密化】
プランクには空気を翼型に沿って前縁部分から層流を維持したまま流す働きがあります。そのため、表面は滑らかで、設計した翼形状に厳密に従っていることが重要な箇所です。スタイロフォームを熱した金属棒によって成形することでプランクとして使用できますが、前年度まではこの金属棒は2種類しかなく、使い分けも曖昧でした。今年度は、設計した翼型の前縁半径を計測して適切な径の金属棒を複数用意し、翼の区画ごとに厳密に使用する金属棒を定めました。これにより前年度よりも成形したスタイロフォームがより翼リブに合致し、再現性の向上を図れました。また、これにより形状が合わずにプランクが剥がれるという前年度までの問題点を抑制することができました。

図3:前縁半径の測定

総括

前年度までで改善され培われてきた製作方法を引き継ぎつつ、さらなる課題の改善と挑戦を行い翼の精度と強度の向上を行うことができました。テストフライトでは測定の誤差や微小な風の影響もありますが、理論的に必要な対地速度に達するよりも早い段階で浮上が確認できたため必要な精度は満たせていたと考えられます。一方で、精度にこだわるあまり製作の時間を要してしまったため全長39mの翼を製作することを考えるともっと効率面とのバランスを考慮すべきだったと思います。また、今年度は鳥人間コンテストに出場することができず、琵琶湖での飛行ができませんでした。設計や製作のフィードバックが限定的になってしまうことが残念です。今年度の変更点をテストフライトでの性能を吟味しながら評価し、琵琶湖での確実なフライトに繋げていきたいと考えています。