- Group全体設計
- Date2026.01.07
S-320 Element 設計方針
パイロットの限界まで漕げる機体
今年度の設計方針は「パイロットの限界まで漕げる機体」です。23、24 年大会では発進直後に主翼の構造が破壊し、墜落してしまうといった結果となってしまいました。また、S-230 以降琵琶湖上で定常飛行に入ることがないまま 9 年間の時が経とうとしています。そんな TBT の現状を断ち切るべく、S-320 ではパイロットの限界まで漕げる機体作りを目標に掲げ、設計製作を行ってまいります。
2 人乗りの意義と新しいカタチ
S-320 の機体設計を考えるうえで、「2 人乗りの意義とは?」という大きな難題について設計者同士で話し合いを行いました。TBT が 2 人乗りにこだわっている理由は何なのか、2 人乗りでしかできないことは何かが明確に見えていなかったため、2 人乗りという最大の利点を生かすためには何ができるのかを考えるところから始まりました。
その結果、2 人乗りの利点を生かす新しいカタチとして、プロペラを 2 基に増やし、コックピットの前後に配置する「双発串型機」の構想を進めておりました。これは 2 人のパイロットの駆動経路を完全に切り離すことで、2 人乗りを採用することによる駆動効率低下のデメリットをなくすことと共に、従来の機体よりも軽量な機体設計を行うことができること、空気力学的にもより効率の良い機体になることなどがメリットとなります。今年度は安全な運用が見込めないことを理由に採用を見送りましたが、今後の TBTの機体設計の一案となる新しいカタチを生み出すことができました。
設計方針
今年度の機体設計は「デファレンシャルギアの採用」、「操縦方法の変更」、「横の安定性の向上」、「軽量化とテール剛性の補足」の4点を主軸としておこないました。それぞれについて、短くはなりますが紹介します。
【デファレンシャルギアの採用】
昨年度より採用したデファレンシャルギアですが、パイロットが異なるケイデンスで漕いでも良いという点が最大のメリットとなります。今までのパイロットを 1 つのチェーンでつなぐ方式では、どうしてもパイロット的に漕ぎづらい機体になってしまうため、理想よりも効率が下がってしまいます。
そのため、重量増にはなりますが、今年度もデファレンシャルギアを採用する運びとなりました。
【操縦方法の変更】
S-300 までは電気制御によるフライバイワイヤ方式で操縦を行っていましたが、昨年度はパイロットの操縦桿と尾翼をワイヤーで物理的に繋ぐワイヤーリンケージ方式の操縦方法を採用しました。昨年度のテストフライトの結果を踏まえて、ワイヤーリンケージが原因となる事故や問題点が多かったため今年度はフライバイワイヤ方式を採用することとしました。しかし、前年のワイヤーリンケージの経験を活かし、入力をジョイスティックではなく操縦桿に変え、操舵班を今年も結成し研究を続けることで、来年以降の技術発展をサポートします。
【横の安定性の向上】
近年ラダーの設計が変わっておらず、横の安定性を正しくとることができていませんでした。テストフライトの映像などを解析したところ、ラダーの効きがかなり強い傾向にあったため、今年度はラダーの面積を 20%ほど減少させた設計にしています。横の安定性はラダーの面積と上反角の具合によって決まるため、今年のテストフライトでは例年よりも多くの飛行試験を実施し、ラダーに取り付ける翼端板の大きさや主翼の上反角などを変えて、最適な具合を探っていく予定です。
【軽量化とテール剛性の補足】
飛行機設計において最も大事なことは、軽量化です。昨年度の機体は全備重量がおよそ 207kg でしたが、今年は現地点で 198.5kg を予定しています。前年度の機体をベースに、確実に軽量化できるところを徹底して軽量化する方針で進めています。それに伴い、図 1 で紹介していますが、今年は地面から FBTB までの高さが約 1830mm と、歴代の機体の中でもかなりコンパクトな設計となっています。
また近年のテールビームのたわみが大きく、尾翼を操縦した際に振動を起こしてしまうことや、舵力がテールのたわみで吸収されてしまう傾向にあったため、今年度はテールの剛性を大きく上げるためにフレームビームよりも径を大きくし、Φ100 からΦ120 へと設計変更を行います。
以上の通り、今年度は前年度の機体形状を踏襲したうえで、基本的な箇所の設計変更を行います。今年度はフライトにて挙動を確認して調整しなければならない項目が多いため、例年よりも作業日程を一ヶ月早め、飛行試験を例年よりも多く行っていく予定です。また、試験時の記録を正しく取るため、機体の加速度等から得たデータを用いて S-320 機の振動特性などについても解析をしていければと思っています。

総括、意気込み
今年度は「パイロットの限界まで漕げる機体」という方針の下、飛行機としてより理想的な設計に近づくように基礎部分の設計変更を進めます。昨年鳥人間コンテストに出ることが叶わなかった S-310 の想いをのせて、前年度の機体設計を踏襲する設計方針となっています。2 人乗り機がまた鳥人間コンテストという大舞台で輝いた存在になれるように、S-320 Element は部員全員の想いを紡いだ機体製作をおこなってまいります。今年度の機体は歴代機体の中でも軽量かつ小柄でスタイリッシュな設計となっているので、今年度も TBT の活動にご期待いただけたら幸いです。
各パーツの細かい設計方針や、現地点での設計進捗などにつきましては、次項より各班設計者からの紹介がありますので、ぜひそちらも併せてご覧ください。